科目学習書●[メディアテクノロジー論]/[マルチメディア活用論]
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ビデオ
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http://www.infonet.co.jp/apt/March/syllabus/MedTech/video.html
スチル(または静止画像。止まっていて動かない視覚=写真、絵、版画など)に対して、TV放送やDVDビデオ、VHSテープに録画された映像のような動いて見える視覚をビデオ(video)という。
ビデオの歴史はほかのメディアに比べると格段に浅く、記録が可能になって100年と少し、通信が可能になってからはやっと50年しか経っていない。
映画やTVはビデオの部分(=スクリーンに映し出されて目で見る要素)とオーディオの部分(=スピーカから耳に聞こえてくる要素)とを時間に沿って並べることによって構成されている。このようなメディアをまとめてムービ(movie)とよぶ。ビデオは(特別な目的のために使われる場合を除いては)ムービの一部として取り扱われ、単独で使われることは少ない。しかし、ムービにとってビデオは重要な要素になっている。
この単元では、まず、ビデオの撮影/再生のしくみを学習する。続いて、ビデオの記録/通信に用いられている媒体とフォーマットについて学習する。また、ビデオで特に深刻な負荷の問題と、その解決のためのいろいろな工夫について学習してから、これらのフォーマットで使われているコーデックについて学習する。
ビデオの構造
ビデオは、時刻に沿って変化する視覚だ。これをそれぞれの時刻で切ると、その瞬間の視覚がスチルとして断面に現れる。これをフレーム(frame。資料[フレーム])という(▽図)。
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フレームの列としてのビデオの記録
8mmフイルム 約1/2秒分
左から右に向かって順に記録/再生される
このことは、オーディオが時刻につれて変化する圧力の列として表現できるのと似ている。
それぞれのフレームは(スチルなので)ラスタ、さらにセルに分けられる。
日本で(アナログ方式の)TV放送やビデオに使われているNTSCという規格では、フレーム当たりの(有効)ラスタの本数は480本/フレームに決められている。
これから始まるデジタル方式のTV放送では、何種類かのプロファイルの中から、コンテンツに最適な精度を選んで使い分けられるようになっている(→[デジタルTV放送])。
ビデオの上映
記録/通信に続いて、ビデオを表示して運動する像が見られるようにすることを(広い意味での)上映という。
一連のスチルを、一定の時間(1/3〜1/60秒ぐらい)ごとに切り替えながら見続けていると、(スチルとスチルの間の)実際には見ていない運動が、はっきり見えてしまう。
わたしたちの視覚には、動いてはいない視覚の中に実在しない運動を見てしまう傾向がある。この現象を仮現運動(apparent motion)という(資料:[私たちはどのようにして世界を見ているのか?]、[仮現運動])。
フレームの一連の列がビデオとして見えるのは、仮現運動の複雑なものだと考えられている。
[Director](▽図)などのアニメーション制作システムを使うと、一連のスチルを、順番に間欠的に表示させることができる。先生がビデオを作って見せるので、実際に仮現運動を体験してみなさい。
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QuickTimePlayer
スチルは、紙などの支持体に定着するか、プロジェクタによってスクリーンに投影して像を見せることができた。しかし、ビデオの像は時間につれて切り替えていかなければならないので、スチルの場合とは違って定着させてしまうわけにはいかない。つまり、ビデオの上映には、プロジェクタとスクリーン(またはこれらを合せたディスプレー)がいつも必要になる。
ビデオの上映では、これらのほかに、各フレームを間欠的に呼び出すシステムも必要になる。フレームが呼び出されさえすれば、それをスクリーンに投影するのは、スチルを表示するのに使うのと同じように、LCD(液晶ディスプレー)やCRT(casode ray tube、陰極線管)が使える。特にLCDは多くの長所を備えているので、CRTやムービフィルム映写機からの移行が進んでいる(資料[液晶の世界]、[CRT]、[プラズマディスプレー]、[SED])。
映画館で上映される映画はムービフィルムに記録されている。映画館では、フレームを交替する機能を組み込んだ特別な映写機(projector)を使って、映画をフィルムからステージの巨大なスクリーンに投影している(資料[映写機])。
映画館の映画では、1枚のフレームの全体を同時に投影することが可能だが、TVやVHSなどのビデオテープの技術では、一瞬には一つのピクセルしか投影できない。このことは、スクリーンに投影されている像が点滅しているように見えてしまう原因になる。
この現象を防ぐため、上から下に向かってラスタ順に記録/通信する代わりに、最初に偶数番のラスタだけを1本跳びに記録/通信して、それから奇数番のラスタだけを1本跳びに記録/通信する手法が使われてきた。これをインタレーシングという(▽図)。インタレーシングを行なえば、ビデオを再生する時に点滅しているような感じを抑えることができるが、その代わりに上下に揺れているような感じが強まってしまうことがある。
インタレーシングが行われている場合と行われていない場合のそれぞれについて、見え方にどんな影響が現れるのか、極端な場合について実際に確かめてみよう。
今のような装置が生み出されるより前にも、ビデオを上映するためにいろいろなシステムが工夫されていた。1秒〜数分ぐらいの短いビデオなら、いろんな工夫によって実現されていた(資料[フェナキストスコープ]、[ゾートロープ]、[プラキシノスコープ]、[キネトスコープ]。および演習[ビデオの先駆け])。しかし、現在のように、30分とか2時間とかいった長さのビデオが記録できるようになったのはようやく100年前のシネマトグラフからだ。
先生がフェナキストスコープやゾーイトロープを持って来るので、実際に見ておこう。
ビデオの撮影
現在の多くのビデオは、実際に動いている像をムービカメラで撮影して自動的にフレーム列を生成する技術に基づいて作られている。この技法はライブ(live)とよばれている。ライブには高速な撮影を可能にする技術が必要だったので、ライブが実現したのは、ようやく今から100年前になってからだった。
アニメーション(animation)ならこうした処理を人手で行なえばいいので、それまでの初期のビデオはアニメーションとして作られていた。
今でこそアニメーションはビデオの中の特別な一部と見られているが、ほんとうは、アニメーションがビデオの本来の形だった(資料[アニメーション])。
ビデオの編集
90年代から、ビデオの編集などの作業はコンピュータを使って行なえるようになってきた。
先生が、ムービ制作システムの[Premiere](▽図)を使ってビデオの編集、向きや大きさや色などの調整をして見せるのでその感じを確かめなさい。
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Premiere
負荷の削減
ビデオで最も難しい問題は、その負荷が極端に大きくなることにある。
1本の映画を素朴に録画しようとした場合の、媒体にかかることになる負荷の重さについて、先生といっしょに考えてみなさい。
ビデオは媒体にとてつもない負荷をかけるので、記録しようとすると長大なフィルム/テープが必要になるし、放送なら転送に莫大な時間がかかってしまう。さらに、カメラから媒体、媒体からスクリーンへの翻訳にも時間がかかる。困ったことに、ビデオの場合は、スチルやオーディオとは違って処理をがまんして待つわけにはいかない(演習[ビデオはどのくらい重いか])。この問題を、ビデオにおける容量の問題という。映画やTVは、これらの問題をかろうじて解決できたことによって立ち上がることが可能になった。
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聞きたいこと 確かめておきたいこと
アニメーションに必要な絵の枚数は?
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ビデオってビデオテープのことじゃなかったの?
学習の成果を自己評価してみよう
もっと深く学習するための資料
ジェイムズ-モナコ
岩本憲児、内山一樹、杉山昭夫、宮本高晴(訳)
映画の教科書
(フィルムアート社、83-08-10)
下の資料の邦訳
この単元の学習のために見るなら特に第2+4章がおもしろい
ISBN4-8459-8348-6 3500円
James Monaco
How to Read a Film
The Art, Technology, Language, History and Theory of Film and Media
(Oxford University Press, 1977)
シャープ
液晶の世界
(ウェブ, 著作年不明, http://www.sharp.co.jp/sc/library/lcd/index.htm)
企業の広報ウェブの一部
だけど内容はきちんとしてるから(でも難しいよ)、気合いを入れて見に行ってきなさい
原理、構造、像を生み出すしくみが図解で分かる
越智宏、黒田英夫
図解でわかる画像圧縮技術
(日本実業出版社 99-01-25)
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いろいろな圧縮の技法の解説
もともと工学系の学生のために書かれている本なんだけど 親切に書かれているから 1週間ぐらいかけてゆっくり読むといいよ
ISBN4-534-02884-9
NHK取材班(編集)
角川文庫 9711 (日本の選択 4)
プロパガンダ映画のたどった道
(角川書店 05-07-10)
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NHKの番組トーキーは世界をめざすのドキュメンタリ化
映画が誕生した前々世紀末から終戦までの50年史
映画に関する技術の急速な発展のようすがよく分かる
ISBN4-04-195406-1
Richard Platt
Cinema
(Eyewitness Guidesシリーズ)
(Dorling Kingsley, 1992)
日本語ではないが図や写真がとてもよく揃っているから読みやすい
邦訳もあるかもしれないけど
ISBN 0-86318-791-9
Macでディジタル-ムービーを作る
日経バイト、pp.302-304(92-01)
コンピュータ用のビデオは実際にはどうやって作っているのか気になる人のために。感じぐらいはこれでつかめる
[マルチメディア演習]でも学習する
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映像
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05-08-22