MP3は、正式には
MPEG-1オーディオレーヤ3(
MPEG-1 audio layer:3)といって、映画などの
オーディオの部分を記録/通信するための
コーデックの一つとして定められた。なお、
MPEG-1の
オーディオの
コーデックにはほかにレーヤ1とレーヤ2がある。
MP3では、
オーディオをいくつかの振動数の範囲の成分の和に分解し、そのそれぞれを
PCMと同じ方式で
コーデックする(▽図)。ただし、3kHz前後の成分については細かく
標本化+
量子化を行なうが、それ以外の成分についてはごく粗く
標本化+
量子化するようになっている。このことによって、MP3は
PCMの1/10近くまで媒体の
負荷を減らすことを可能にしている。
当然ながら、このようなことをすれば、記録/通信される音の
品質は大きく低下する。しかし、人の聴覚は、3kHz前後の高さの音については敏感だけれど、それ以外の高さの音については微妙な違いが分りにくいというくせがあるので、人に聞かせることだけが目的であれば、このことは全く問題にならない。ただし、耳で聞いても分からないというだけで、実際には音をかなり変えてしまっているので、ほかの音を作るための素材としてあとで使うような場合には適さない。
現在では、MP3は
PCMや
AC-3とともに、
DVDビデオの
オーディオトラックの
コーデックなどに広く使われている。
特に2000年前後の、
ADSLや(iPodのような)ポータブルHDが広く利用されるようになる直前の時期には、音楽の記録/通信をしたいけれど、媒体が細くて
PCMのままでは無理だと考えていた人たちが新しい解決を探していた。たとえば、3分の曲(ポップスならこのくらい)をふつうの
PCMで記録すると10MB近くにもなってしまう。ところが、MP3なら1MBぐらいに減らすことができる。そのため、通常の電話の回線を使って音楽を録音したファイルを転送したり、FDに入れて持ち歩いたりするための技術として、MP3は大いに注目されることになった。あげくには、海賊版の流通にまで使われることになったので、MP3は何か後ろ暗い技術のように見られることになった(もちろんきちんとした国際規格というのが実像)。
MacOSでは、MP3で符号化した
オーディオは
QuickTimeという
フォーマットのファイルに収納するのが標準になっている。Windowsでは、(同じ名前なのでややこしいけど)MP3という専用の
フォーマットを定めている。