数は用途によって取り扱われ方が違う。日常の生活では、わたしたちはいろんな種類の数を意識しないで使い分けている(または、何でもできる超強力な数を使っている)。
一まとめに数だと考えられているものは、とり扱い方によって、少なくとも以下の4種類からできている。
・数量
ものごとやことがらの量を表わす数。単位と呼ばれるある基準の量の何倍であるかを表わす。ただ、単位はかなり勝手に決めることができるものだから、何を単位にするかはっきり決めておかないと、同じ数が違う量を表わしているということが起こる。
・個数
個数ははっきり数えることができるものの量を表わす数だ。単位はともなわない(あえてつけるとすれば個とか回だろうか)。
・番号
ものごとの量を表わすのではなく、区別と順番を表わす名前として与えられている数。
・名標
番号と似ているけれど、順番とは関係なく、ただ区別できればいいように割り当てられている数。
これらの用途の違いによって、数の扱い方はいろんな点で異なってくる。
○変域
数量は端数をともなうのがふつうなので実数の全体にわたって値をとる(たまたま端数をもたないことはあり得る)。ほかの数の値は整数に限られる(負の数になることはあるかもしれない)。
○加工
数は、足したり引いたり(その平方根を求めたり、...、つまり何かの加工をしたり)すれば新しい数が得られる。数量や個数として使われている数の場合は、こうして得られる新しい数は何かの意味があるけれども、番号や名標を加工して得た結果には意味がない。
○大小
数の大小を比べることは、数量、個数、番号では意味があるが、名標では(何かの大小を表わしているわけではないので)意味がない。
○遠近
数量、個数、番号では、0などの基準の数に対して遠近を比べることには意味がある。
○精度
数は加工を繰り返しているうちに桁が長くなりすぎてしまうことがある。このような場合、数量として使うのなら、ごく下の桁は四捨五入したり切り捨て切り上げしたりして丸めてもいい。また、πや1/3のようにやむを得ず近似値で扱わなければならない数もあるので、数が同じか違うかを下の方の桁まであまり厳密に比べることは、逆に意味がない。しかし、上の桁は絶対に失われないようにしなければならない。
これに対して、個数、番号、名標では、たとえ最も下の桁でも違うものは区別できないといけないので、それを丸めるぐらいなら作業が中止するようになっていた方がいい。
数を過信していろいろな誤りを起こすことがあるけれど、いろいろな判断に数を使うことが問題なのではない。数にはいろいろな種類があるのに、それを知らずに(またはわざと)混同して使ってしまうことに問題がある。