[月虹舎]

(イメージ)
グッバイガール
第06場
森島永年
△
< |
>
http://www.infonet.co.jp/apt/March/Aki/GoodByeGirl/06.html
その一ヵ月後。小劇場の狭いロビー。芝居がはねて、優子が煙草を吸っている。
優子 ひどい目にあっちゃった。何よ、まあ、狭いし、人はいっぱいだったし、腰のあたりが痛くなっちゃった。おまけに、お芝居はつまらなかったし。...あら、ユカはおもしろかったの。そう言えば、あんたけらけら笑っていたものね。ママはちっともわけが分からなかったわ。いったいあの芝居がどういうストーリーなのか、それさえも分からないんですもの。...悪かったわね。ママはどうせ古いわよ。きっと、あんたぐらいの年ごろでなければ分からないギャグばかりだったんでしょ。...まったく、招待券を呉れたからみにきてやったけれど、こんなんだったらこのくそ熱い中来るんじゃなかった。それにあいつ一人だけ浮いていたでしょ。あいつもこういう芝居は向かないんじゃないの。...それにしてもユカは元気になったわね。よく笑うようになったし、それだけでもママはうれしいわ。...カルシュウム。何よ、それ。ああ、今までカルシュウムが不足していたってこと。あいつの受け売りでしょ。変な影響を子供に与えないでくれるといいけれど。そうね、夕食がおいしくなったのは認めるわ。それは確かね。最も、ママが帰ってくる頃には、大体冷たくなっているけれど。あらっ...
正夫 やあ、来てくれてありがとう。
優子 素敵なお芝居だったわよ。やっと、あんたが役者だってことが分かったわ。
正夫 まあ、ひどい芝居だけどね。脚本も、演出もなっちゃいない。役者だって、訓練不足でまともにしゃべれる奴なんて一人も居ないんだから。...そう、ユカちゃんはおもしろかった。困ったもんだ、世代の断絶ってやつかな。
優子 あんただけ、浮いていたわよ。他の役者の中で。
正夫 それ、誉めてくれてるの。
優子 別に事実を言っただけ。
正夫 そう、悪いけど、まだ、打ち合せがあるんだ。それじゃあ。...ありがとう、ユカちゃん。たとえ、ほっぺとはいえ、これはファーストキスかな。...そうだね、パパとはキスしたことあるか。じゃあ、本当に悪いけれど。(退場)
優子 人前でみっともないことしないでよ。ママが恥ずかしいじゃない。さあ、帰りましょう。...今夜は、あいつの帰りは遅いでしょうし、今だって、もう十分遅い時間なんだから、どこかで食べることにしましょう。ママは、久しぶりで、カルシュウムの少ない暖かいおかずを食べてみたいわ。
△
< |
>
基点のページへ
・
[三月劇場]
Copyleft(C) 1999, by Studio-ID(ISIHARA WATARU). All rights reserved.
このページに自由にリンクを張ってください
このページへの助言や感想や新しい情報を歓迎します
下記まで連絡をいただければ幸いです
isihara@tokiwa.ac.jp
最新更新
99-03-08
このページはインフォネットのウェブサーバに載せていただいて発信しています