パネル資料

創造性の育成 - メディア学の教育の現場から

討論






フロア  (フォーラムのタイトルにもある)"国際的な競争に打ち勝てる創造力"が日米で違うのはなぜですか?

(市場調査の不足、投資の機会の不足などの要因がフロア/パネルから指摘される)

パネル  創造力は企業が発揮するのではなく、人が発揮するものだと思います。
 このことを前提にするのなら、この問いかけは、"日本のソフトウェア企業には、国際的な競争に打ち勝てる創造力を持った人材がなぜ就職しようとしないのか"と読み変えさせていただいてもいいかと思います。
 現在、いろんな優れた資質を持った若い人たちが、いろんなソフトウェアメーカに採用されていきます。そうした資質のうちで、特に創造性につながる資質を持った人たちは、まず、ゲームメーカの開発に参加しようと考えます(社外への発注もあるので就職だけが参加ではありません)。だからかどうかは分かりませんが、ゲームソフトウェアだけは、日本の企業も海外で健闘しています。
 若い創造力がゲームにしか向かおうとしない理由はいろいろあります。その中でも、報告者がこれだけでもう決定的だと考えてしまうのは、記名の問題です。ゲームのソフトウェアなら、誰が企画して誰がキャラクタをアニメートして誰が背景を描いて誰が作曲したか、誰もが知っています。だから、ゲームのソフトウェアの開発に参加することは、若い才能にとっては大きなあこがれです。ほかのパッケージソフトウェアではそんなことはありません。
 あと10年もしないうちに、一般のパッケージソフトウェアのメーカは、そこそこは稼ぐけれど、社全体としては創造力のない企業になっているかもしれません。ちょうど映画産業みたいに。

 帰宅してから次のようなことを考えました。
 パッケージソフトウェアとして、[MacOS]や[Windows]や[Word]や[Excel]や[Photoshop]や[Navigator]のようなヒット商品を考えるとします。これらはそもそも既存のメーカが作り出したものでしょうか。違います。これらのソフトウェアが開発されたので、それによって新しい企業が立ち上がったのです。だから、疑義はさらにこう言い替えられるべきだったのです。"日本にしろ海外にしろ、既存のソフトウェアメーカは、これからは何をするべきか?"


フロア  あらかじめ素材を準備しておくという手法について、アニメーションの実習のほかには具体的にどんな例がありますか?

パネル  去年のこのフォーラムでの報告[ユビキタスクラスルーム 学校はホールかチャージか?]で言いましたが、大学が学習者に対して提供するべきサービスは、知識を伝達するという従来の意味での教育をすることから、学習への意欲を維持しうる環境を提供することに切り替わっていくべきだと思います。つまり、大学はアフォーダンスのある環境を提供するべきだと思います。
 [MicrosoftWord]の使い方を勉強するんならツタヤでビデオを借りた方がよく分かりますから。
 ご質問については、たとえば、[オルゴール]という課題でも、目的は違いますが、同じような工夫をしています。
 この課題では音楽を作曲しますが、あらかじめ、曲としてまとまりやすい和音の配列をいくつか準備して、学生にその一つを選ばせます。また、和音の音を小節の中で分散させるパタンも紹介します。
 これらをそのまま使うと、伴奏だけのような音楽ができます。そこから、パタンのとおりのメロディを外れて、もっと美しいメロディを作るように勧めると、少ない小節の中でしか成り立たない曲ができるのを防ぐことができます。




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