パネル資料
創造性の育成 - メディア学の教育の現場から

0.2
[プリントメディア演習]
[マルチメディア演習]
常磐大学 コミュニケーション学科
(97年〜)



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 常磐大学のコミュニケーション学科は人間科学部の学科の一つで、個対個、あるいはマスメディアにおけるコミュニケーションに関する現象について科学的に考察できる能力の育成を目標として教育を行なっている。学生は、4年間のカリキュラムを通じて、コミュニケーションを考察するためのさまざまなアプローチについて学ぶ。それらは社会学、言語学、心理学、美術/デザインなど、多岐にわたっている。
 [プリントメディア演習]および[マルチメディア演習]はコミュニケーション学科の専門科目で、それぞれ1時限×15週で履修するものとして開講している。


0.0. [プリントメディア演習]


 [プリントメディア演習]はコミュニケーション学科の専門科目である。
 コミュニケーションの形式の一つとして版画、印刷、写真などのメディアについて考えると、これらのメディアは、それぞれ、特有の可能性と限界とをもっている。したがって、これらを通じてメッセージのやり取りをしようとする送り手や受け手に対し、他のメディアとは異なった効果を及ぼしている。[プリントメディア演習]は、そうしたメディアの特徴を理解することを学習の目標としている。
 技術の面での学習については、個別に支援はするが中心の目的ではないとした。これは、科目の目標を明確にするためである。
 97年度は、送り手の側にとってのメディアの特徴について学習することを話題の中心として設定した。つまり、それぞれのメディアの特徴によって、どのようなメッセージの送り出しが容易に、あるいは困難になるかをテーマとした。
 学習の形態については、それぞれの学生に対して短期間で完結できる規模の実作を体験させることとした。ただし、設備の制約により、機械可読化された情報を入出力としてパーソナルコンピュータの上で実習のすべての工程が行なえるように工夫した。また、時間の制約により、それぞれの課題は作業の説明も含めて2時限分(約3時間)で完結するようにした。97年度の課題の内容についてはあとで詳しく述べる。
 クラスの規模は30名に設定した。履修学年は2年生以上とした(97年度は事情により2年生のみ)。コミュニケーション学科では、1年次で[情報処理演習1/2](計30週)を必修するので、これにより、ビジュアルシェル(Windows95)や2、3のアプリケーションの操作を経験していることを前提にできることとなる。
 教具としてはWindows95が稼働するパーソナルコンピュータでPhotoShop(Adobe社)を使用する。学生のコンピュータは、LANを通じて個々に共通のファイルサーバにアクセスできる。また、さらに学外のウェブを閲覧することもできる。ただし、相互にファイルを交換することはできない。


0.1. [プリントメディア演習]の詳細


 97年度の[プリントメディア演習]では、以下の課題を設定した。

 表情のある自画像(再入門)
 鏡か証明書写真を見ながら自画像を描く。ただし、目標はそのことにはなく、シェルの操作とファイルの概念の確実な理解にある。

 大看板
 写真を主題とする単元である。
 特に、メッセージの受け取り手が写真というメディアに対して感じるリアリティと、それが空虚になりつつあることを話題とする。
 作業としては、何かの製品の雑誌広告に使うという想定で、写真のクリンナップをさせる。汚れやむらを直すだけでなく、じゃまな背景の一部を整理したり、視線を直したりすることまで各自に工夫させる。

 百鬼夜行
 写真を主題とするもう一つの単元である。
 写真は切り貼りが可能なので、それによって新しい写真(のようなもの)を作ることができる。この技法をコラージュという。この課題では、あらかじめ与えられた写真の中から何点かを選んでそれらを素材とするコラージュとして妖怪の集団を描かせる。
 コラージュは、細部のリアリティと全体としての反リアリティとが両立する異様な表現になる。コラージュは写真がただの記録にすぎないことを強調する。

 まるで絵のように
 版画を主題とする単元である。
 夢に見た風景を、YMCK(イエロー、マゼンタ、シアン、黒)の4色に分解して描き、最後にそれを合成してフルカラーの絵にする。
 この技法は、グラフィックデザインの分野でも、絵本のイラストレーションなどによく用いられている。
 プロセスカラーの原理と実際を理解することがこの課題の目的である。


0.2. [マルチメディア演習]


 [マルチメディア演習][プリントメディア演習]と同様にコミュニケーション学科の専門科目である。
 [マルチメディア演習]では、コミュニケーションの新しい形式であるウェブおよびCD-ROM形式の出版のメディアとしての可能性と限界を理解することを学習の目標としている。
 技術の面での学習については、[プリントメディア演習]と同様に中心の目的ではないとしている。
 話題の設定の方針および授業の形態についても[プリントメディア演習]と同様である。
 教具としてはWindows95が稼働するパーソナルコンピュータでWordPad(Microsoft社)およびNavigator(Netscape社)を使用する。


0.3. [マルチメディア演習]の詳細


 97年度の[マルチメディア演習]では、以下の課題を設定した。

 目と口のある手紙
 作文をする。字の色や大きさ、各種の強調をわざと過剰に使う。また、"目"や"口"などの語句はあらかじめ準備してある絵文字で表現する。
 この課題は、科目で行なう実習の全体に共通な作業の知識を身につけることが目的である。その一つは、複数のアプリケーションを同時に使ってコンテンツを制作する技法である。もう一つはHTMLの考え方に慣れることである。

 ジャンクション
 各自がテーマを決めて、そのテーマに関するウェブを世界から探し集める。そして、それらへのリンクをまとめたページを制作する。順番や分類を工夫したりコメントをつけたりして、そのテーマについて資料を探している人に役立つように設計する。
 閲覧者の行動を予想しながら、特定の目的に適したウェブを設計することを学習する。

 [銀河鉄道の夜]
 宮沢賢治の[銀河鉄道の夜]の本文の一部を選び、ほかのページへのリンクとして、本文に現われる専門用語の脚注を作る。

 以上の課題のほか、97年度はWWWの検索サービスの利用とかデジタルムービの編集/再生について簡単な実験を行なった。しかし、これらは導入にとどまるもので、何かの表現を企画し制作するという形式での実習にはならなかった。

 文献にも掲げている実際に公開しているシラバスの記事は以上の記事と一部がくい違っています。これは、シラバスが予定に基づいて書かれたためです。




プリントメディア演習
97年度科目解説書

マルチメディア演習
97年度科目解説書



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