パネル資料
創造性の育成 - メディア学の教育の現場から

0.1
[アニメーション/石原ゼミ]
京都芸術短期大学 映像コース
(95〜96年)







0.0. 科目の概要


 京都芸術短期大学の映像コースは造形芸術学科のコースの一つである。2年次では[映像設計I/II/III]が開講される。これは、実験映像、アニメーション、CGの三つの班に分かれていて、学生はそのうちの一つに所属して学習し、その成果を卒業制作として発表する。
 [アニメーション/石原ゼミ]はアニメーション班のワークショップの一つで、週に1回、2.5時限(のちに2時限)ずつ実施される。ワークショップの目的は、アニメーションの表現を成り立たせているいろいろな要素について分析的に学習することにある。授業の形式は、週ごとに一つの単元を学習し、各自が短いショットを実際に制作する。
 クラスの規模は20名前後に設定されている。学生は、1年次の[映像基礎I/II/III]で、少なくとも4週ずつコンピュータの操作と利用の基礎を学んでいる。
 教具としてはMacOSが稼働するパーソナルコンピュータでMoviePlayer(Apple社)などのソフトウェアを使用する。それぞれの学生は1台ずつコンピュータを使うことができる。これらのコンピュータは、LANを通じて相互にファイルを交換することもできる。


0.1. [アニメーション/石原ゼミ]の詳細


 [アニメーション/石原ゼミ]では、以下の課題を設定した。

 表情のある自画像(再入門)
 鏡を見ながら自画像を描く(アニメーションではない)。ただし、おもな目的は、シェルの操作とファイルの概念の確実な理解にある。

B 
 現実に存在する運動を観察によって再現することを主題とする単元である。
 いろいろな状況を想定して、水中を泡が上っていく運動をアニメーションとして表現する。
 現実の泡の運動の特徴を自分で発見して作品の中に再現するようにする。

C 回転
 現実には存在しない運動を論理的な思考に基づいて構成することを主題とする単元の課題の一つである。
 小さな立方体(複数でもかまわない)をキャラクタ(運動の主体)として、速さが一定で周期が1秒の回転を表現する。なるべく多くの種類の表現ができないか工夫する。

D 発進/停止
 同じく現実には存在しない運動を構成することを主題とする単元の課題の一つである。
 簡単なキャラクタを使って、それが走りだす運動のショットと止まる運動のショットを作る。加速/減速が自然に見えるようにする。

E フライト
 再び現実に存在する運動を再現することを主題とする単元である。
 与えられた地形図の上でコースを設定して、飛行機の操縦席から見える情景を10秒間のアニメーションとして構成する。
 透視や上昇/下降/旋回にともなう姿勢の変化を理解して、それらを自然に描き出せるようにする。

F 目ぱち口ぱく
 ショットとそれを構成するフレームとの関係を主題とする単元である。具体的には、時間の単位としてのフレームが日常の動作に対してどのくらいの長さに当たるか理解することが目的である。
 10秒ほどの会話の録音を聞いてタイミングをグラフに起こし、その会話に合わせられる映像をアニメーションとして作る。動作や感情をいわゆる目ぱち(目の開け閉め)と口ぱく(いろんな形の口の切り替え)によって表現する。
 描画には様式化したものを使ってもかまわない。運動の始め方/終り方を的確に決めることが重要である。

G MTV
 前の課題での学習を受けて、シーンとそれを構成するショットとの関係を主題とする単元である。
 2分ぐらいの音楽の演奏に合わせられるシーンを、既存のショット(アニメーションとは限らない)の編集によって構成する。

 百鬼夜行
 アニメーションのフレームを構成するための、描画に代わる一つの手法としてコラージュを導入する。
 写真を切り貼りして複雑な映像を作りだす技法をコラージュという。この課題では、あらかじめ与えられた何点かの写真を素材に、コラージュとして妖怪の集団を描かせる。

I デジタルイン
 デジタルイフェクトを導入する単元である。
 自分の顔の写真のスキャナで電子化し、それにほどこすデジタルイフェクトの強さをフレームごとに調節して、イフェクトの中から顔が現われるようにアニメーションを作る。

J スライム
 ブロブモデルによるキャラクタの造形を導入する単元である。
 複数の球を配置し、それらの位置や融け合いの強さを変えながらレンダリングさせ、特別な効果のあるアニメーションを作る。

K しりとり
 モーフィング技法を導入する単元である。
 しりとりになってつながる5枚の絵を描き、それぞれの間をモーフィングによってつなぎ合わせてアニメーションにする。
 全体としての流れや2枚の絵の対応のつけ方を工夫して、ダイナミックな運動が得られるようにする。

L 移りいく景色
 トレーシング技法を導入する単元である。
 絵の具の滲み写り、重ね描き、敷き写しなどによって、前のフレームを少しずつ描き変えてアニメーションにする技法をトレーシング技法という。
 各自が準備した風景写真を使い、少しずつ描き足してはフレームを撮り重ねていく。自然に変化していま部分と意外な展開を見せる部分とをうまく積み重ねて構成する。

M ファンシークロック
 スプライト技法を導入する単元である。これは絵を描いて切り抜いた板を台紙の上に撒いて、少しずつ動かしながら撮り重ねていく技法である。
 この課題では、スプライト技法を使って1秒分のアニメーションを作り、ファンシークロックとして使えるようにする。



アニメーション/石原ゼミ
演習解説書





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