パネル資料
創造性の育成 - メディア学の教育の現場から
作品の規模
特に時間的表現に関連して
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作品の規模の大小は、課題の難度や効果に直接に影響します。規模が大きい作品ほど、より自由な構成が可能になりますから、内容やその表現の方法についてより深い考察が必要になります。それに、制作にかかる作業は規模(それともその階乗?)に比例して増えるので、訓練の効果も大きくなります。しかし、そのためには十分な時間の余裕が必要です。一般には、実習の時間は限られているので、むやみに規模が大きい作品を作らせることはかえって有害かもしれません。
ムービ(動画像)や音をベースにした表現では、作品が時間的な拡がりをもっています。つまり、作品を制作するのにも視聴するのにも、作品の規模に応じた時間が必要になります。したがって、このような作品の制作実習の設計では、作品の規模の設定が特に重要です。
実は、もっと深刻な問題があります。それは、このような作品は、内容を確認するためには再生を行なわなければならないことに由来します。再生そのものに必要な時間も、必要な個所にアクセスするための時間も作品の規模に比例します。ですから、作業を早く済ませようとすれば、推敲のために作品を見直す回数を減らさなければなりません。
いろいろな設定の課題を実習させてみましたが、学習者がのびのびと制作できる作品の規模は、作品の内容とは関係なくほぼ一定であるように思われます。2講時(約3時間)の実習にふさわしいと感じられる作品の規模を表にまとめてみます。
既存の素材の編集による ごく短いムービの構成
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30秒〜1分
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フリップアニメーション
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1秒(8フレーム/秒で)
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作曲
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16小節
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なお、どの場合でも、学習者は教具を実習で初めて使うものとします。
短い作品の制作にも短所はあります。第一に、短い作品に、一つの完結した作品として自立していると感じさせるリアリティをもたせるのは難しいということが挙げられます。このような"もの"を作っていると、学習者は、制作をしているのではなくて制作システムの操作の練習をしているだけだという意識しか持てなくなります。さらに、実際にそのような小さい作品では、学習者が何かの表現に活用できる余地がないという問題もあります。これらの問題は、実習を設計する時にうまくカバーするべきです。さもないと、制作への動機も、完成の達成感も与えられなくなるでしょう。
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