パネル資料
創造性の育成 - メディア学の教育の現場から

サブゴールという逃げ込む穴







事例・ア
[カウントダウン][ファンシークロック]([コンピュータ演習])

 これらは、アニメーションをテーマとした課題です。
 これらの課題では、何名かの学習者が、たった1枚のフリップやキャリアをいつまでも丁寧に描き直し続けるという行動をしました。
 これから述べるのは、その一つの解釈です。多くの学習者はアニメーションの運動を考えるより、絵を描くことの方が自由にできます。履修を始めるまでの経験の多少も違うし(アニメーションを作るのはほとんどの学習者にとって初めての経験)、制作システムの使いやすさの問題もあります。描画システムでは、カーソルを動かすとおりに描画のストロークが作られていきますが、アニメーション制作システムでは、作業とその結果とを同時には見られません。そのほかいろんな理由から、アニメーションを作るための本来の作業は、描画に比べてストレスが大きいものになっています。そこで、学習者はつい、より容易な描画に逃げ込んでしまいます。慣れているしシステムは親切だし、しかもともかく必要な経過だという自分への弁解もできます。
 前の節でとり上げた別の問題を解決するために、キャリアを自分で描かせる代わりに既存の素材から切り出させる方法を採用しましたが、これはこちらの問題の解決にも効果がありました。
 このような学習者の行動は、初めてで難しそうな作業から逃避するために、自分がうまくできると分かっている作業に逃げ場を求めようとする行動ではないか、と報告者は考えています。大学の授業のように、学習者に自覚があって学習への意思が強いのに逃避が起こってしまうのは、逃避する先の行動(描画)が本来の目的(アニメーション)の過程なんだから、という逃避の正当化が可能だからのようです。


事例・イ
[ジャンクション]([マルチメディア演習])

 この課題は、(リンクの)リストを構造化することをテーマとしています。
 前半では、学生が自分で設定したテーマに関係のありそうなウェブを、WWWとして提供されている検索サービスを利用して探しますが、多くの学生はその段階から先に進めなくなりました。これも前の事例と同じで、検索は以前にほかの科目などで学習したことがあって、よく慣れているので、サブゴールであるということが無意識でのエクスキューズになって、そこにとどまってしまったようです。
 そもそも、テーマからすれば、ウェブを探すことそのものは重要ではありません。むしろ、検索に拘泥するのはWWWをただの受け取り手として使う意識を強化することにもなりかねません。そこで、次からは、あらかじめ、膨大なリンクのリストを作っておくことにしました。そして、初めにその分析をさせて、抽出と構造化をまずさせます。この段階では、学習者のジャンクションはあまり規模は大きくなくて、したがってテーマ性も明確ではありません。そこで、それを新しい動機にして、学習者が見い出したテーマを強化するように追加するべき項目を探しに行かせるつもりです。







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98-01-18

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