事例
[カード]、
[家紋]([コンピュータ演習])ほか
最近の作図システムでは、曲線を錨(anchor)のコントロールによって設計します。この機能は、少なくともビジュアルデザインの世界からは、これまでのコンパスや雲形定規や自在曲線定規を使った技法を全く駆逐してしまいました。そこで、この課題でも、こうした技法を導入しようとしました。
ところで、作図システムは、新しい曲線を生成する便宜的な手段をいくつか備えています。その中には、フリーハンドで描いた曲線をトレースして曲線を生成する機能が含まれています。これを使えば、錨が使えなくても曲線を作ることはできます。多くの学生は、この機能に気がつくと、曲線をフリーハンドで描こうとします。
しかし、それではテーマを学習したことになりません。たとえば、学習の次の段階として、曲線の形を変化させてバリエーションを作る技法が導入できません。実用的にも、このような機能を使っていては、必要でもない余分な錨を持った、形を制御しにくい曲線ができてしまうので、一般的な手法としてもふさわしくありません。
このように、同等の結果が得られる場合に、慣れてよく知っている表現を代わりに使って済まされてしまうことがよくあります。もちろん、これは、あらかじめ、学習のテーマをよく説明してなかったために起こることです。
また、慣れている表現よりも新しく導入しようとしている表現の技法の方がより適しているように、課題を設定することが重要です。新しい技法を導入するのだから、これは実は動機づけとして当然のことです。この課題でも、初期の設定は適切ではありませんでした。カードのビジュアルを設計するのなら、図柄によっては確かに錨から生成される曲線はかえって使いにくいからです。あとの年度ではこれを家紋の設計に切り替えました。家紋ならカードよりも抽象的な図形を使うのが自然だし、変形によってバリエーションを作る必要がありますから、錨でコントロールできる曲線のメリットが活かせるからです。