事例
[表情のある自画像]([コンピュータ演習])
これは、描画をテーマとした課題です。
この課題では、自分の顔を鏡で観察して絵に描きます。けれども、多くの学習者は、自分の顔の描き方を自分で決めてしまっていて、それを非意識的に描いてしまいます。したがって、観察をしません。そもそも鏡を借り出しに行かない学習者もいます。また、そのうちのさらに一部の学習者は、絵ではなくて、顔を表しているとされる図形(へのへのもへじのちゃんとしたもの)を記号的に描いてしまいます。
もっとも、このような描き方をしていると、すぐに作業が終って時間が余ってしまいます。そこで、そこを見計らってうまく誘導をかけると、これではおかしいと考えて、あらためて観察を始めるようです。しかし、その機会を逃してしまうと、ほかの項目で議論しますが、執着的な片ぼかしやイフェクトカタログに興味が移ってしまうみたいです。
2年目からは、課題のタイトルにもあるように、必ず表情をつけさせるようにしました。いつも決めている顔の描き方は(証明写真のように)すました表情をしているので、それで済ませることができません。それに、学習者は、自分が怒ったり笑ったりしている時にどんな顔に見えるのか初めて気がつくようで、かえっておもしろがって描いています。観察への動機も強化されているようです。
なぜか、怒っている顔を描く学生が多いようです。学習に参加している時の、むきになって学習に打ち込んでいる心の状態が表情の選択に反映してしまうからかもしれません。だから学習者たちの作品を見ていると、少なからず胆が潰れる思いがします。