論文

芸術系大学における基礎専門教育としてのハイパーカード制作





6. 報告−[映像基礎]におけるハイパテキスト実習

6 . 0 . [映像基礎]の概要

 京都芸術短期大学では、 1 9 8 7年から造形芸術学科の映像専攻の学生の全員に対して初年度に必修科目としてコンピュータグラフィックス教育を行なってきた。これを整備したのが 9 1年度から実施している[映像基礎]である。
 [映像基礎]は、京都芸術短期大学の映像専攻の学生に対して1年次に必修する科目として開講される。通年で火曜日から木曜日まで(つまり平日のほとんど全部)3日間続けて午後いっぱい( 2 . 5講時)を費して行なう。
 前期は表現の手段(写真・ビデオ・コンピュータ)について学び、制作に用いる機器の操作とそれらの機器によって広げられる発想について学ぶ。また、後期は表現の内容(イメージ・モーション・ディスプレー)について学ぶ。前期は3班に分れて約1か月単位でローテーションを行なう。後期は三つのセミナのいずれかを選択して履修する。
 これらのうち前期のコンピュータの単元でハイパテキスト実習を行っている。

注釈

6 . 1 . 要求分析

 実習に充てられる時間は 2 0講時で、一見ゆとりがあるように見えるが実際にはかなりタイトである。その理由は、この中に、専門教育として映像芸術を学ぶために必要な、映像表現の概念やとコンピュータの操作法の教育を積み重ねているためである。たとえば、描画機能や M S - d o sはこの後もほかの実習で使用するので、あとで思い出せる程度には使い方を身につけておいてもらわなければならない。この点で最も重要なのは、教育用のシステムと学生が実際に使うシステムとに矛盾が生じないようにすることである。
 例年の傾向であるが、このように多少ともコンピュータに関連のある専門性の高い教育では、学習者によってコンピュータへの親和度に相当大きな差があるのも教育を困難にするファクタである。

6 . 2 . 実習の形態

 [映像基礎]におけるハイパテキスト実習は[勉強べやの冒険]の表題のもとに行なわれる。 2 . 5講時の実習を2日連続してさらに4週にわたって行なう。最終目標は、各自がふだん生活しているへやの中でいろいろな方向を見たり、置いてあるものに近寄って観察したりできるハイパテキストを制作することである。

O週目
 ほかの学生が作った作品を遊んで、どのような形態の作品を作ることになるのか、またどのような点に注意してデザインするのが重要か理解させる。この作業を通じてコンピュータの基礎的な操作に慣れさせる。ただし、[アドベンチャーツクール 9 8]のユーザインタフェースは製品に特有のものなのでそれを強調しておく。また、アプリケーションの中の操作だけでなく、 M S - d o sの操作について講義と実習実収を行なう。また、以後の作業の準備として、として自分のへやの4壁面をスケッチさせる。
面をスケッチさせる。

1週目
 取材に基づいて、各カード(テキストの断片の単位)に情景をそれぞれ略画で描き込ませる。第1日は描画機能の性能とその操作について理解させる。2日目に各カード間にリンクを張る。次の週ではへやに置いてあるものに接近できるようにするためにいろいろな器物( 1 0点程度)の個々のスケッチを採取してくるように指導する。
に指導する。

2週目
 取材に基づいて、器物に寄った情景のカードを追加して描かせる。そして、壁面のスケッチのカードとの間にリンクを張らせる。以上でいったん作品を完成させる。
る。

3週目
 初日は、互いに作品を交換して遊ばせる。作品から得られる情報に基づいてへやの地図を描かせてみて、情報が不足していたり作品のデザインに不備があったりした場合はそれをレポートにまとめる。2日目は、作者はプレーヤが描いた地図とレポートを受け取り、作品の不備を充足するように手直して作品を完成する。
 以上のように約 3 0講時にわたって行なう。ただし、教具が学生の人数より少ないため、各学生が実際に制作ができる時間はより少ない。
 教具としてはPC 9 8 0 1XL 2 1台とハイパテキスト作成/再生システムである[アドベンチャーツクール 9 8]を用いている。
 アドベンチャーツクール 9 8]は、本来はアドベンチャゲームを制作したりプレーしたりするためのソフトウェアであるが、ゲームをハイパテキストとみなすことによってハイパテキストの制作 /閲覧に流用することができる[文献 0 8]。




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